妖怪道中記 現代編 一頁目

突撃!隣の妖怪ミュージアム
レポート番号1 2017/6/11


妖怪道中記 現代編がスタートしました。

現代編ではこれまでの民話・伝承編とは視点を変え、リアルに私たちが生きる…そう「今」の妖怪に迫ります!

記念すべき第一弾では、百器夜行絵巻から現代の妖怪アートを収集し続けたら自宅の一室が大変なことになってしまった「突撃!隣の妖怪ミュージアム」のレポートします。

全体の写真 突撃!隣の妖怪ミュージアム

キジトラの猫たんの歓迎で癒されつつご主人に部屋に案内頂くと、畳の部屋一面に博物館でしかお目にかかれない美術品や現代の妖怪アートが入り乱れて展示されています。

大昔に描かれた幽霊画と現代の妖怪クリエイターさんによる作品が時代を越えて同時に並ぶ様子は、なかなかお目にかかれません。

百器夜行絵巻と鈍画 突撃!隣の妖怪ミュージアム

百器夜行絵巻と鈍画

妖怪スキーが真っ先に惹かれる作品といえば、中央の百器夜行絵巻と河鍋暁斎「鈍画」でしょうか。

百器夜行絵巻は、民話・伝承編「百鬼夜行世界展」で取り上げた室町・江戸時代に描かれたとされる絵巻物ですが、歴博や他の特別展で見た作品と比べると色鮮やかです。ご主人の話によると、「着物の細部の柄まで描かれているのは珍しい」とのことです。

江戸の絵師らしい躍動感溢れる作風の「鈍画」も間近で見させていただきました。

さらに、新たに収集された玉藻譚(全五巻)を拝見。大陸から渡り殺生石となるまでの玉藻前を巡る物語を綴った江戸時代の作品の様です。

玉藻前と言えば、現代の古典芸能だけではなく「うしおととら」(白面の者)や「地獄先生ぬ~べ~」…数えたらきりが無い程マンガやゲームに登場しお馴染みの妖怪キャラクターと言えるのではないでしょうか。(作品のジャンルと世代が偏って申し訳ない)

江戸時代に読まれていた書物にも登場する玉藻前が、形を変え現代の私たちにとっての身近な作品や娯楽に登場するのは喜ばしい事ですね。

玉藻譚より 突撃!隣の妖怪ミュージアム

玉藻譚より

色々聞いてみました!

せっかくなので、妖怪コレクションを収集され快く掲載の許可を頂いたご主人に色々伺ってみました。

質問ごとに答えて頂いた内容を元に妖怪館で編集しています

妖怪・怪奇コレクションを集めるきっかけは?

子どもの頃から妖怪・異形が大好きで、妖怪や幽霊の本をたくさん読んでいたご主人。妖怪や幽霊の本の文献の写真などを見て、

「どうせなら本物が欲しい」

と思い至ったそうです。

20代の頃から集め始め、気付いたらこうなっていたと話してくれました。

般若の凧 突撃!隣の妖怪ミュージアム

最初に入手したかも知れないという般若の凧

特にお気に入り・思い入れある作品はありますか?

幽霊之図 突撃!隣の妖怪ミュージアム

幽霊之図

一つ目は、一番好きという「幽霊之図」。

目が飛び出ていたりなどのえげつなさ・グロテスクを追求したではものではなく、存在そのものの怖さを感じさせる所に惹かれるそうです。

足元のわずかな枯れススキも荒涼とした演出となり、怖さの象徴となっていますね。

また、どの角度から見ても目が合うという技法が施されいるのも趣きがあると話してくれました。

百鬼夜行 突撃!隣の妖怪ミュージアム

百鬼夜行

もう一つはこちらの「百鬼夜行より」。

長編である百鬼夜行絵巻の冒頭と同じですが、絵巻とは太陽が逆であったり真ん中に謎の切れ目が入っています。

元々あったものが切り取られたのなら何故冒頭に切れ目があるのか?

ひょっとしたら、ちょうど良いサイズの紙が無く継ぎ足して即興で描いたものなのか?

など、真相は定かでない為に答えがひとつではない。色々な考察が出来るのが面白いそうです。

公開の理由

プライベートで収集したコレクションにも関わらず、今回道中記掲載に協力して頂いた理由を聞いてみました。

たくさんの人の目に止まることで、妖怪が好きな人が増えて欲しいのが一番の理由のようです。

妖怪文化が衰退しないために、現代の作り手による妖怪作品が多く世に出て→求める人(好きになる人)がどんどん増えていって欲しいという願いがあるそうです。

数多くの妖怪作品が生まれた江戸時代に比べて、現代は疑問に思った事がその応えがすぐに分かってしまうので不思議に思う事が少なくなり、「妖怪が生まれ難くなっている」という話もありました。

百鬼夜行 突撃!隣の妖怪ミュージアム

最初に入手したかも知れないという鬼の念仏

そんなご時世の中妖怪をアートやキャラクターに投影され続けているのは、人間にとって不可解だったり不思議な存在を無意識のうちに求めていんだと思います。

ズバリ!今後欲しいコレクションを聞いてみました 2017年6月現在

幽霊以外の妖怪が充実しているので、対比的に幽霊画。江戸期ぐらいの掛け軸が良いとのことです。

あとは本物の妖怪。

希望としては、年齢は江戸時代。服装は着物(和装ならOKかも?)。男女問わず。出てきて欲しいときに出て欲しい。

待遇としては、快適に暮らせるように環境を整え(可能な限り)食事も出します(用意できるものなら)。祓い屋などの外敵から護ります。…だそうです。

我こそは!!という方は是非ご応募下さい。

全体を通して

先に述べた「百鬼夜行より」にあるような、過去の事はその本人にしか分からない、だからこそどんな解釈が出来てどのようにも描ける怪奇コレクションは、「ひとつの答えに縛られない自由さに価値がある」と語っていました。

決まった正しい答えだけを求められ間違えを認めない風潮がある中、答えが無く自由に描ける・自由な考察が出来る妖怪文化が今必要ではないか、と最後にコメントを頂きました。

今生きている私たちが、正しさだけを追及することで失いつつある「ゆとり」そのものが、現代の妖怪の在り方のひとつなのかも知れません。

百鬼夜行 突撃!隣の妖怪ミュージアム

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