2025年6月23日(月曜日)
歯医者さんの待合室で偶然見つけた神楽の舞台のパンフレット。「石見神楽×女方 林佑樹の世界」。
演目には「大江山酒呑童子」、それと瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)との恋に破れた恨みで大蛇と化した岩長姫が登場する「神羅万抄」とあった。
妖怪や神々の伝承を語り継がれてきた神楽を体感できるまたとないチャンスと思い、チケット予約して足を運んだ。
第一部。
最初は、東西南北…四方を祓い清める儀式舞から始まった。
神々を迎え入れるために舞台を祓い清めるものらしい。
これは恐らく「つるめそ」などの古代の芸能民たちが、祭事の行列の先頭で行ったという露払いと同じ原理だ。
吉福社中の吉原狐さまの時も同様なのだが、現代に受け継がれた形で、こうしてリアルに目の当たりに出来るのは本当に感慨深い。
(いつもは文献資料の白黒の文で読むだけだから。
後に続く酒呑童子や神羅万抄も素晴らしいものだったのだが、ひと際目を惹いたのは衣装の艶やかさだった。
酒呑童子は金ピカで、金ぴか魔王だった。いや、この呼び方じゃあ成り金みたいで小物っぽいか。そんなことはないです(笑。
ともあれ、金糸・銀糸をふんだんに使う豪華さは石見神楽の特徴の一つらしい。
「なんかムズカシイ言い回しをするのかな?」と想像していたが、セリフは観客に分かる言葉でちゃんと物語を追うことが出来た。
どちらの物語も人々を苦しめるワルモノを倒してめでたしめでたし、というシンプルなものだった。言ったら不謹慎かもしれないが、仮面ライダーなどの少年向けヒーローもののストーリー展開を彷彿とした。
大筋の話はシンプルな勧善懲悪のようではあるが、それで片づけることは出来ない。
酒呑童子とその配下たち、そして岩長姫があまりにも魅力的なのだ。
酒呑童子の堂々とした佇まい。最期に「悪は滅びぬ」と言い放つ独自の美学。岩長姫の美しく気高い佇まい。業への苦悩。
こういった敵役のキャラクタ性に深みを与えるのは、プロの神楽師たちの研鑚された演技や演出の賜物なのだろうな、と思った。
それにしても神楽にゆかりのある人は、みな人格者というか器が大きい傾向なのだろうか。
主催の林 佑樹さんだが、演者としてはもちろんだが人柄で推せる。
極論、今まで見知った神楽に携わる人々はみな人柄で推せる(少ししかいないんだけど)。
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